ちょうど2000年の夏の終わりごろ(8月28日)からパリとロンドンを周る旅に行った。これがわたしのはじめての海外旅行であった。なぜこの年に初めての海外旅行をする気になったのか。
それはひとつには父が亡くなったためでもあった。
終戦後の、日本の文化や思想の極端な方向転換に不信感で一杯になった父は軍国主義や日の丸君が代が大嫌いで、西欧のモダニズムに憧れていた人だった。語学フェチと言われ、5ヶ国語を学んだ。ドイツに行けばドイツ語で表現主義を語り、フランスに行けばフランス語で印象派の話をする、といった具合だ。
その父が亡くなって、残された写真やパスポートを眺めているうちに、すでに父の魂は、苦しかった病から開放されてヨーロッパに飛んで行っているのではないだろうか、と思えてきたのだ。
そして無性にわたしも渡航してみたくなった。
両親が離婚していたため、父に海外に連れて行ってもらう機会には恵まれなかった。
それで娘を連れてパリとロンドンの両方を欲張って訪れることにした。

最初に飛行機が降り立ったのはパリのドゴール空港だった。父は世界の国の中でもたぶんフランスが一番好きだったのではないかと思う。訪問回数は他の国にくらべて断トツに多いし、とにかく西欧美術が大好きであった。また自分でも絵を描き続けていた。父の絵を展覧会場で見るようになったのは、亡くなる10年ほど前からであったと思う。生きていたら、安くておいしい穴場のレストランも教えてもらえたし、たくさん歩いていないとわからないような通のお店も教えてもらえたのだが・・・
「早く元気になって一緒にパリに行こうよ」と声をかけなかったことが今でも心残りだ。

パリの印象1

大手旅行会社の夏休みツアーであったが、なんといってもホテルが悪い。
ホテルで清掃作業などしているのはほとんどがもと仏領から来た肌の黒い人たちであるが、それがとてもだらだらしていてやる気がない感じに見えた。日本のホテルのイメージとは程遠い。
裏手に日本にも上陸した巨大なスーパー「カルフール」があり、なんでもここで買うことができた。
しかし汚い!!日本でだったら考えられないことだらけ。
売り場のチョコレートの包装が破かれて少し食べてあるのが放置されているのには驚いた。
もっと驚いたのは翌日もそれが片付けてなかったことだ!!
「こ、これがパリか」とわたしの印象はすっかり悪いものになってしまった。

初日の朝、ホテルの窓から外を見ると黒いラブラドールを散歩させている人が見えた。
世界のどこにでも犬を愛する人がいて幸せな朝の散歩を楽しむ人と犬がいる。

スケジュールは午前中がノートルダム寺院、エッフェル塔、車の窓からシャンゼリゼと凱旋門、コンコルド広場というもの。午後はベルサイユ宮殿で比較的時間はゆったりととれた。そしてオペラ座の前で解散。


この彫刻。下から見上げて感動。


ほとんど忘れかけていたがノートルダム寺院の中は写真撮影可

海外出張の多い友人に犬の散歩の服装を勧められた
バロック音楽のレコードなどのジャケットにあり


車からでぼけてしまったがギマールのデザインしたメトロの入り口

ギマールの地下鉄についてはこちらに画像があります

お昼はオペラ通りの角にある、多分日本からの団体が良く連れて行かれるような感じのレストランでエスカルゴを食べた。味はあまり記憶にないが、バターやパンがとてもおいしかった。もちろんホテルの朝食のパン、ミルク、バターなどがみなおいしくて、フランスは農業国だな、と思った。

ベルサイユへは車で移動。
夏休み中だけあって各国の旅行者で中へ入るのも行列。トイレも順番待ち。
ヨーロッパのお城は日本のお城とは概念が違う。馬屋のりっぱさ。
イヤフォンガイドをつけて中を周る。
それにしても「すりにご注意」の放送がうるさくてたまらない。
おみやげやさんには絵葉書やティピカルなエッフェル塔のブローチなどがあった。
買う気はしない。
わたしが驚いたことに、ガイドさんは一人旅の年配の女性を忘れてバスを出発させてしまった。
騒ぐ乗客、あともどりするバス。あせる添乗員。やれやれ。
こんなところで一人置いてきぼりを食ったら大変だ。

再びオペラ座前にもどりそこで解散する。
しかしホテルまではとても遠く、あまりのんびりとした気分にはなれない。やはり言語への距離感も大きく、カルフールでの買い物中も心地よいものではなかった。
しかしせっかくの少しのフリータイム。なにかお買い物をしよう!!と娘と繰り出した。
パリでお買い物をしようと思えばいくらでも楽しみはあるのだ。

しかしほどなくまたいやな気分になってしまった。オペラ座の裏手にあるデューティフリーのデパートに立ち寄って見たら、なにやら行列ができていてロープが張られていた。それはルイ・ヴュイトンのショップであり、日本人観光客でごったがえしているさまであった。わたしは即座に娘に「近寄るな」と言って恥ずかしい気持ちでそこを離れた。

結局免税店で香水や化粧品を少しだけお土産用に購入し、シャプリエでバッグなどを購入。
日本にはない色や形のものが豊富にあり、お店の人たちも若くて親切であった。
ちなみにご飯はちょっとしたお店に入ってなにげに頼んだものでもとてもおいしくて、感動である。