捨て猫を拾ったら
〜子猫を拾ってから里親募集をするまで〜

  

私は今までに何回か捨て猫を拾い、里親募集をしてまいりました。
その中で、悩んだり迷ったりしながらある程度のことを学んできたつもりです。皆さんにも、これから子猫や捨て猫を保護する機会があるかもしれません。でも、どうしたら良いのかわからない、そんなときに私の体験が少しでもお役に立てればとの考えから、猫を拾ってから里親さんに引き渡すまでの一部始終を書いてみました。

加筆訂正2005.11.08部分にはをつけました

捨て猫を拾ったらどうするか

捨て猫をかわいそうと思いながらも保護を躊躇なさる方は、おそらく子猫をどのように扱ったらよいのかがわからない場合が多いのではないでしょうか。また、子猫の数が複数であったり衰弱していたりして、手間とお金がどのくらいかかるのか、予測がつかないためではないでしょうか。
拾った子猫の育てかたや扱いかたについてはこれからお話することで、ある程度の知識が得られると思いますので、ご参考になさってください。
金銭的な問題についてはいちがいには申し上げられませんが、野良ちゃんであるということでボランティア精神を発揮してくださる先生もたくさんおいでです。多少遠くても口コミでそういう先生を探して訪ねてください。また多少お金がかかっても、命が救われて新しい家族に迎えられ、幸せになっていく姿をみることは、何物にも代えがたい喜びをきっとあなたにもたらすはずです。もしお子さんがいらっしゃるなら、こんなに良い情操教育のチャンスはまたとないでしょう。
よく「だめじゃない、捨て猫なんか拾ってきちゃ。また捨てていらっしゃい。」というお母様がいらっしゃいます。それは少し違うのではないでしょうか。命はこういうふうに育てて大事にするものなのよ、と率先してお手本を見せてあげられたら、それが最高の教育ではないでしょうか。また、動物愛護の心を幼いときから身につけることは、とても良いことだと思います。

1. 子猫を拾ったらすぐに清潔にして暖める

さて、子猫らしきものがダンボール箱もしくは紙袋などにいれられて捨てられています。中からは子猫とは思えないほど切羽詰った大きな泣き声がきこえます。お腹が空いて母親を求めているのです。それともただ弱々しく鳴いているだけでしょうか。あるいは冷たくなりかけているかもしれません。
そんな子猫を発見して拾ってきたら、すぐに暖めます。ダンボールに古いセーターやタオルなどを敷いてその中にくるんだホカロンなどをいれてあげます。私は猫用のヒータをタオルでくるんでいれてやります。たとえ7月であっても体が弱っていたら暖めたほうが元気になるのが早いのです。同じ意味でクーラーのある部屋にはおかないほうが良いのですが、どうしても置き場がない場合はビニールや毛布などで冷風が直接あたらないように工夫してあげてください。

大切な注意事項として、もしすでに猫ちゃんを飼っていらっしゃるようでしたら、決して拾った猫とは一緒にしないでください。先住猫が雄ならば子猫が危険ということもありますが、何よりもどんな病気をもっているのかわかりませんので、わかるまでは接触させないでください。我が家でも3匹目の猫を拾ったとき、診断を受ける前に先住猫と接触させたため次々とウィルス性のかぜに感染し、全猫の治療を余儀なくされたことがありました。もちろん現在はみんな元気です。
またカリシウィルスなどに犯されている場合は、治癒後も1ヶ月くらいは感染力がありますので、接触は避けてください。猫の病気は犬には感染しないと思いますが、必ず獣医さんに相談してください。皮膚病などがある場合は犬ばかりではなく人間にもうつる場合がありますので、この限りではありません。

2. 獣医さんへ連れてゆきます

やはり頼りになるのは獣医さんです。かかりつけの獣医さんがいればまず事情を話してなるべく早くそこに行きます。獣医さんへいけば生まれてどのくらいか、雄か雌かなどすべてみてくださいます。そして病気があればこのときに治療して完全に治します。
しばらくは時間がかかるかもしれませんが、後に里親さんに譲渡することを考えれば完璧な健康体にしてお渡しするのがルールだと思います。そうでなければ他の必死で里親さん探しをしていらっしゃる良心的な代理母たちに迷惑をかけることにもなります。ここはちょっとがんばりどころです。
ほとんどの猫が風邪ひきか鼻気管支炎を患っています。抗生物質の注射を何日間か続けることで解消するでしょう。
たいていノミがいますから、体の様子をみながら体力的に大丈夫ということになれば駆除します。私はフロントラインのスプレーを使います。体重から必要量を計算してそれを手のひらにとり、体全体に刷り込んでやります。1ヶ月は有効ですから日付を覚えておいて、里親さんにお渡しするときに申し送りしましょう。またノミがいるとノミを媒介にして寄生する猫条虫がいる場合も多いので一度検便をしてこれも駆虫してもらいます。

最近では様々な感染症にかかっている野良さんが多いので、できれば「白血病」「猫エイズ」「猫伝染性腹膜炎」の検査をしておくと安心して里親さんにお渡しすることができます。

3. ミルクをあげます

もし離乳前でしたら哺乳瓶と猫用ミルクはすぐに必要になります。ミルクは猫用以外のものでは代用できませんのでご注意ください。猫のミルクは大変に濃くて犬用とはまったく違いますし、ましてや牛乳は草食動物のものですから、肉食動物である猫の体には合いません。

生後1ヶ月までは猫用ミルクをあげてください。
もし子猫が生後1週間から10日くらいでしたら1日に4回ミルクを与えなければなりません。たとえば朝6時、昼の12時、夕方の6時、夜中の12時となります。多少都合でずれてもまったくかまいません。
量はそれぞれのミルクメーカーごとに違いますので缶をよく読んで濃度を間違えないように作ってください。
飲み残しはすべて捨てます。

哺乳瓶はどこのものでもかまいません。私はエスビラックの哺乳器をよく使います。かかりつけの獣医さんが最初に貸してくださったのがこれでした。また煮沸消毒でだめになったゴム製の乳首のみの替えもありますので、便利です。


はじめはうまく吸うことができないかもしれません。でもあせらないことです。あまりに猫ちゃんが幼い場合は獣医さんで一番小さな注射器(もちろん針なし)を買ってください。これにミルクをいれて口に流し込みます。少しずつゆっくり流してください。早すぎると気管支に入って危険です。ミルクが流れると思い出したように吸ってきます。お互いにタイミングがつかめてきたら数日のうちに哺乳瓶にかえられるでしょう。それでもだめなら自力で飲ませる努力は続けながら、獣医さんでカテーテルを使って胃に直接ミルクを流し込んでもらってください。あせらずに根気強く続けていれば必ず自分で吸うこつをつかんで上手に飲めるようになります。
哺乳器についている乳首は、たいていゴムかシリコンでできています。吸う力が弱いときには穴を増やしてあげてください。
穴の増やし方ですが、乳首の内側を下から楊枝で突き上げるように刺し、ゴムをのばすように持ち上げながらゴムと楊枝を一緒に消毒したハサミで切り落とします。小さな穴がこうして増やせます。
使用した哺乳瓶とゴムはすぐに洗って煮沸しておきます。煮沸した瓶や乳首をつかむのには先のほうに輪ゴムを巻きつけた割り箸を使うと滑らずに便利です。もちろん残したミルクは捨ててしまってください。

4. 排泄のさせかた

ミルクの後は排泄の時間です。
小さな猫ちゃんたちはお母さんにぺろぺろしてもらってその刺激でウンチやおしっこをしています。そこでお母さんの代わりにティッシュペーパーを数枚たたんで手に持ちおしりにあてて軽くとんとんと刺激を与えるかさするように動かします。するとおしっこが出てきます。こつをつかむまでゆっくり繰り返してください。必ずうまくできるようになります。ウンチは3日に一度でも気にしなくて大丈夫です。1週間くらい出なくて心配になったら獣医さんで相談してください。
この時期のトイレですが、まだ正式な大人用のトイレを用意する必要はありません。とりあえず子猫の入れてある箱かケージの全面にペットシーツをしいておきます。汚れたら即とりかえます。3週間くらいからトイレの代用として小さな箱にペットシーツをしき、その上から猫砂をいれてしつけの準備をします。最初は全員でトイレにすしずめになって寝ていたりするのがご愛嬌ですが、次第にトイレとして活用してくれるようになります。猫のトイレのしつけは犬とは違ってとても楽といえるかもしれません。
準備用の小さな箱としては100円ショップなどで売っている平たいプラスチックトレーで十分です。洗い代えに2つあればよいでしょう。私の家では防水になっている利点を生かして牛乳のあきパックを利用して箱を作っていました。汚れたときは使い捨てにして新しいものに代えればよいので便利です。ガムテープで上手に作るのは娘の仕事です。

5. 離乳のころ

1ヶ月近くたちました。ここまで順調にきたでしょうか。
はいはいのようなぎこちない動きしかできなかった子猫たちが獲物を狙って小走りするようになったり、人間をすっかり親と思い込んで体によじのぼってきたりして、本当に可愛いものです。正直にいって、飼えるものなら全部飼いたい、誰にも渡したくない、という心境にまでなっているでしょう。
またこのころになるともうダンボールではおさまっていません。どこか子猫を置けるお部屋があると一番良いでしょう。小さいのでどこかに紛れ込んで行方不明のまま寝てしまうと、探すのが大変です。家ではたいてい長男の部屋が猫部屋と化します。ここにディスカウントショップで入手したウサギ用のケージ(¥3000〜5000で折り畳んでしまえます)をおいて使っています。大人の猫をいれると半分がトイレ、残り半分がベッドになってしまいますが、子猫には十分です。
さて、離乳食です。
猫ちゃんの頭数が多ければ缶入り(ちょうどミルク缶くらいの大きさ)の離乳食も便利です。しかし3頭以下なら私の経験では使い切れません。離乳食を食べる時期はほんのちょっとなのです。思い切ってd.b.f.の子猫の離乳食のカンズメを買いましょう。あるいは子猫用のカンズメでパテタイプになっているものを買ってきて、猫用ミルクをといたものでつぶすように混ぜたものもよいと思います。もし手作りにするなら消化の良い白身のお魚を電子レンジで温めてよくつぶしてからあげてください。もちろんこれに猫用ミルクを混ぜてもOKです。
このころはまだつぶつぶや塊があると下痢をする場合があります。最初は食べるというよりも吸い込む感じで必死ですが、次第に慣れてゆきます。いずれにしてもミルクは補助でまだ与えてください。ウンチの様子をみながら切り替えてゆきます。

1週間くらいで離乳時期も終わり、子猫用のフードに移行できます。やはりウンチの様子をみながら、注意して移行してください。
生後一年までは子猫用のフードを続けます。里親さんにその旨お伝えください。小さなころから栄養をたくさんつけておくと、病気をしない骨太の個体になります。子猫用フードは大人用にくらべると多少お値段が高いものですが、健康には替えられません。獣医さんにかかるよりはむしろ安くつくのです。

6. 里親募集をはじめる

里親募集は生後3週間くらいからはじめます。このころにはすっかりフォトジェニックな可愛らしい姿になっています。写真の撮りごろですから顔や体の柄がよくわかるようなものをたくさん撮ってあげてください。ただし子猫のお渡しは1.5ヶ月以上になってからが良いでしょう。

昔はインターネットの環境がなく、チラシはりや友人知人親戚頼みで本当になかなか決まらず大変でした。ちなみに私の妹一家には家から2匹(サリー、トット)、高校時代の友人に1匹(ミティちゃん)、お隣の佐々木家に1匹(トラちゃん)、そのお隣に1匹(マロちゃん)、近所のクリーニング店に1匹(なんとチンチラシルバー)、知り合いの紹介のお魚屋さんに1匹、里子に行っています。
そして今はインターネットがあります。ここ1年、ネットで6匹、獣医さんのところで展示していただいて1匹、新しい家族をみつけてあげることができました。
インターネットの良いところは、反応が早く、無料で一度にたくさんの人たちに宣伝ができることです。したがって猫ちゃんのプロフィールと写真の出来が、人気に大きく関係してくることはいうまでもありません。
反対に悪いところは?
それは匿名性が高いというところです。里親詐欺事件があとを絶たないのはそのためではないでしょうか。確認といってもメールの文字面だけでは本心はわかりません。
里親募集サイトに行くと懇切丁寧にいろいろな確認のとりかた、怪しい人物についての情報がのせてあります。よく参考にしてください。

私の場合はいくつかのチェック項目を設けそれにすべて答えていただいています。もし「人を信用しないのか」という反応であればその時点で交渉は終わりです。むしろ「そのお気持ちわかりますよ。大切な猫ちゃんを見ず知らずの人に渡すのだから当然です」といってくださるかたのほうが多いです。
あらゆるチェックにも通ったし、住所も名前も明かしてくれているのに、まだなにかひっかかる、というときはさらに面接でチェックします。相手をよくみて気になるところもよく質問などで確認してください。一人暮らしの人だったら実家の住所と電話番号も聞いておきます。最終的にはお届けに伺い、自分の目で、里親候補の方の暮らしぶりやお家の様子を確認し、これを最後のチェックポイントにします。お渡し方法としては、所有権をこちらにおいたまま一応猫ちゃんをお渡しし、1ヶ月のお試し期間中に連絡をまめにとりながら最終判断をする方法が良いと思います。

猫のお届けやお家の確認などは決して一人では行かないでください。最低でも2人で。万が一断りたいと思っても、雰囲気で断りづらい場合もあるかもしれません。2人以上ならなんとか押し戻せます

里親詐欺、虐待者への注意は以下のリンクからごらんになれます。

猫捕りが出た!     確かな貰い手さん探しのために

里親募集サイト集はこちらから

7.Sindyままのチェック

猫がほしいという方がみえても決してとびつかず冷静に判断してください。
せっかく手間と愛情とお金をかけて救った命です。幸せになってもらわなくては、意味がありません。

里親募集の大きな流れについてもう一度おさらいします

子猫が健康体になるネットの里親募集のほかちらしやポスターも使って募集

里親候補の方が現れたらまずアンケートに答えてもらう


選考する

お見合いに来ていただく


お互いにGoサインがでたらお届けする


お試し期間2週間で様子をみながらフォローをする(その時に誓約書を交わす)


うまくいけばこのまま正式譲渡

チェックのポイント

@ 持ち家かマンション、アパートの別
マンション、アパートの場合、ペット可能な住まいかどうか。
マンションなら規約、アパートなら管理人さんの承諾書を見せてもらう。

A 家族構成と家族全員の賛成を得られているかどうか。
家族の反対を押し切っていないか、動物アレルギーの人がいないか。
以前妊娠9ヶ月の方がお見えになったときはお断りしました。常識的に考えてこれから出産をする人には無理だと思ったからです。

B 以前に猫を飼った経験のある人ならどうして、何歳で亡くなったのか。

C 転勤のある仕事についているかどうか。

転勤がある人の場合、引越し先でペットを飼えないと置き去りにする人もいます。
ポメラニアンを3匹飼っていた中国人が国に帰るさい、3匹を放していってしまいました。誰もいなくなった家の前にいつまでも3匹で待っていました。近所の犬好きの家庭に1匹と2匹に分かれましたがひきとられました。

D 完全室内飼いと去勢もしくは避妊を約束できるかどうか。
いまだに猫は外へ出さないと可哀そう、オスは子供を産まないから去勢しなくても大丈夫、子供が生まれてもいつのまにかあちこちに散っていなくなるから平気、などの考え方があります。私はこれが諸悪の根源のひとつであると思っています。
去勢しないで外でフラフラしているオスはノラちゃんの女の子に赤ちゃんを産ませ、哀れな最後を迎えさせます。ノラちゃんたちの寿命はたいてい3年から5年といわれています。ですからこのD番目の項目は死守すべきポイントといえます。
絶対にはずせないのが、
Eこちらからお届けするです。
家を訪ねることを嫌がる方はお断りください。
もうひとつ、必ずお試しステイの期間を2週間もうけます。先住猫さんがいるときは
相性をみるためにもっと伸ばすこともよいと思います。この2週間は里親さんも我が家の猫として迎えることができるかどうかお試ししますし、譲った側も、里親さんとして相応しい方かどうか、拝見させていただくのです。
ですから必ずこのお試しステイ期間を設けて、子猫を渡しっぱなしにせず、フォローしてください。
そのためにも子猫のお届け時に子猫の所有権をはっきりさせておいたほうがよいのです。
里親さんに対してかなり失礼かと思うほどの質問をしたり誓約書まで交わしてお互いにプレッシャーを感じることもあるかもしれませんが、子猫の幸せにはかえられないので、ここはひと踏ん張りしてください。


これらの項目にきちんとお答えいただいてしかもすべてクリアしていたなら、あとはあなたの勘とお会いしてからの印象だけでしょう。責任をもって最後まで飼うとか、ときどき連絡をとることなどはあたりまえなのであえて書きませんでした。
それから連絡先が携帯電話だけの人はお断りしてください。住所を明かさない人もお断りです。単身でアパートなどにお住まいの人は実家の連絡先も聞いて置いてください。

最後に
子猫を保護している間中、里親さんが決まるまでは本当に大変な毎日です。それとはうらはらに1匹また1匹と決まって里子に出すたびにさびしさもひとしおでしょう。
1ヶ月後、あるいは半年後に「こんなに大きくなりました」とか「去勢をすませました」「この子をもらって本当に良かったです」などの連絡をいただいたときが一番うれしいです。
なかにはすでに全く忘れかけていた昔の子のお母さんから写真が送られてきて、思い出すと同時に狂喜乱舞してしまうこともあります。
自分が保護して苦労して育てた子が確実に幸せになっている。それを実感したときに、やっぱり拾ってよかったと確信するのです。この気持ちを一度みなさんにも味わっていただけたら、私も幸せです。

追記
最近ではアンケートを作成し、里親候補の方には必ずそれにご記入いただくようにしています。
犬用と猫用をそれぞれ作り、お届けの際には誓約書を2部作成し、里親さんとこちらとで1部ずつ
正式譲渡が決まるまで保管します。
アンケートと誓約書の見本をご覧になりたい方は犬か猫かの別を明記して
このHPの管理人あてにメールでお問い合わせください。
見本を送らせていただきます。

 

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