イギリス帰りふたたび
2

 

Variety of London1


9月29日


半日ロンドン観光のみセットになっているので
朝早く起きて自分たちで集合場所のOxford Circusまで移動しなければならない。
6年前にはお部屋まで運んでくれていた朝食は
地下の食堂でのブッフェスタイルに変わっていた。


日本で毎日BBCのお天気予報を見ていたら滞在中は雨続きの予報。
でもわたしはロンドンの雨はそれほど気にしていない。
日本の雨のようにじめじめいつまでも降らないし、途中で何回も日が射すからだ。
お年寄り以外はもう誰も傘も持っていないようだ。
濡れながらそのまま歩く。

石でできた古臭い町並みが好きだ。汚くて狭いからロンドンは嫌いという友人もいるが
わたしには心躍る景色である。
そのままオリバー・ツイストの衣装に着替えて歩いても違和感がない。
夫曰く「ロンドンはまだ2階建てバスが走ってるの?」
2階建てバスしかありません、観光用のコーチ以外は。
たまに平らなバスが来ると2両連結。倍稼ぎたいロンドンのバス。


ナショナルギャラリー
この建物の向かって左にある別館では、MANET TO PICASSO「A Redisplay of Modern Masters」という主に印象派の絵画を中心とした展示が行われていた。わたしたちが見学したのはその展示である。入場料ではなく寄付で入ることができる。
お土産に犬の絵がついたワイド判の絵葉書を買う。
途中で折りたたむと通常の大きさになり、絵はワイドで楽しんで郵便料金は普通というものだ。17世紀の絵で牧用犬を伴う馬に乗った牧童が描いてある。



タワーブリッジを曇天の中、眺める。
タワーブリッジとロンドン塔、そしてビッグベンは日本でいう日本橋、皇居、国会議事堂のようなものか。いや日本にはこれに匹敵するアイコンはないのではないかと思う。

1894年建造のゴシック様式の橋は二つの塔を結ぶ形で知られている。
ガラス張りの遊歩道もできており、歩いて渡ると眺めが素晴らしいらしい。


タワーブリッジを渡ると怖いロンドン塔あり。
1078年に征服王ウィリアムによって建てられた、当時のヨーロッパとしてはかなり大きな城である。たくさんの塔が見られる。
昼間でもその歴史を少しでも知っていればあまり気持ちの良いところではないといえる。


タワーブリッジを渡りきると見える橋の欄干の紋章


25年以上兵役を勤め上げた後にここのガードになることは名誉なこととされているらしい。そして夜勤のガードの中にはヘンリー8世に不倫の濡れ衣を着せられ、女の子を産んだというだけの理由でここで処刑されたアン・ボレインの首のない幽霊を見た、と言う人も少なくないそうだ。時にはその首無し幽霊はこわきに自分の落ちた首を抱えており、その首が話しかけて来るという。
数々の霊の目撃談があるここは、王族や身分の高い人たちの処刑場になったが残酷な拷問が行われたり、公開処刑が娯楽として公然と行われたと言うから、チューダー王朝時代の殺伐とした残酷な雰囲気がわかろうというものだ。

ちなみに私のデジカメはロンドン塔で数枚の写真を撮っただけで壊れてしまい、
日本に帰ってから買い換えるはめになったのである。

 

Variety of London 2


Victoria and Albert museum

このあとPiccadilly Circusへ行き、マミコが日本にいるときから楽しみにしていたフットボールチームのユニフォームを買いにLilly Whiteというスポーツグッズのお店に行く。
わたしにはちんぷんかんぷんの世界。
「あのね、赤くて胸にこういうワッペンがついているやつを探して」
というわけでお目当てのチームのユニフォームが次々と見つかりしかもどれもがSALE価格でお買い得。
イギリスはVISAならだいたいOKなのだがここで困った!!
なんと「Please enter pin number」と言われた。
日本ではそんなもの要求されていないので知らない。
わからないのでマミコは結局カード払いをキャンセルして現金で支払った。
たちどころに困り果てたSindyまま。
いつも少しのキャッシュとVISAとAMEXで切り抜けてきたのだ。
おととしはPin number(a personal identification number)
なんて要求されなかったのに・・・

Lilly Whiteでの買い物のあと、PiccadillyからSouth Kensingtonへ移動。
Victoria&Albert Museumへ行くためだ。それにお昼ご飯も食べたい。

South Kensingtonの駅は地下道がとても長く、駅構内と地下道の2箇所に辻音楽家のためのスペースが作られていた。舞台というほどではないが、きちんと仕切られていて、
そこでの演奏が公に認められている場所なのだ。
彼らは堂々とそこで楽器の演奏をし、ふたを開けた楽器ケースの中に
お金を入れてもらっている。その姿にヨーロッパの1都市らしい文化の一面を感じた。
辻音楽家が腕を磨きながら諸国を遍歴して歩き最後はマイスターと呼ばれるようになって戻ってくる・・・マイスタージンガー。

お昼はぐるぐると品定めしたあげく、インド人経営のカレーショップに入った。
怖くてなかなかふらりとレストランに入れない。
もちろんイギリス人が怖いのではなくお食事の味が怖いのだ。
外のテラス席にはインド人の親子連れ。これなら良さそう。

中ではイギリス人の大男がいくつもの皿を並べてタンドリーチキンにかぶりついていた。
ひとしきり食べ終わったところでまた次の皿が運ばれてきたのには恐れ入った。
とにかく量がはんぱではない。
両の腕にはびっしりと刺青。

この人はもと船乗りでその昔インド洋方面に貿易の仕事ででかけ、そこそこの成功を収めた男は地元ではちょっと知られた名士になる。たが、ふとしたことからやくざな家業に手を染めて、かの地をおわれるはめに陥った。過去の栄光と苦い思い出を、今はチャイと一緒に呑み下す。
時々昔を懐かしんでインド料理を食べに現れるのは、そういうわけなのだ。
(すべて妄想である)

イギリスでおいしいのは中華とカレーとフィッシュ&チップスというが、確かにカレーはおいしかった。カレーを食べるためだけにロンドンまで行った、という友人が聞いたらうらやましがるだろう。ちなみに彼女は3日間の滞在で4件のカレー屋をはしごしたという。

刺青のおじ様の皿数に目を奪われていたら
ヨーグルトと間違えてライスプディングを食べて愕然とした。
うす甘い鼻水のよう。ごめんなさい!!

ヴィクトリア&アルバート美術館はその名の通りヴィクトリア女王とアルバート公が19世紀初頭に基礎を作り正式には世界博覧会の収益金を元に19世紀の半ばに産業会館として設立した。いわゆる絵画が彫刻などを展示している美術館と一線を画するのはその時代の工芸品や装飾品、衣装などを展示している点である。
イギリスがもっとも世界に広がりを見せ、いち早く達成した産業革命の恩恵にあずかり、産業を発展させていったころの話である。